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2012年12月13日木曜日

リッピングの戦略と方法論 - 2




オーディオファイル向けのリッピング方法論


方法論...【名詞】 研究や活動の特定分野で用いられるメソッド体系。

リッピング方法論の簡潔な説明: dBpowerampを16/44.1のセキュアモードで使用する。同時に2つまたは3つの異なるファイルフォーマットをそれぞれ別のストレージに出力する。

コンピュータオーディオファイル向けのリッピング戦略の実現は思っているよりも簡単だ。下記の方法論により一撃でゴールを達成することができる。推奨に価するリッピングソフトはいくつもない。自分で試して使いやすいものを選ぶべきだ。

音楽コレクションのリッピングのような作業は、成功を収めるために自分の手でセットアップするということが非常に重要である。セットアップさえきちんと行えば、あとは単調で退屈で頭を使わない作業があるだけだ。プロセスに無駄があったり快適でなかったりすれば、3つのコピーをそれぞれ別のディスクにリップするといった面倒な作業はできないだろう。

私が勧めるのはWindowsマシンをdBpowerampのプロファイルをいつでもリッピングできる状態にしておき、「リッピング・ステーション」にしてしまうことである。この方法は次のような場面に遭遇した時に考えたものだ。つまり、5枚のCDをリッピングしてる時にすぐ聴きたくなっても、この方法なら全体のプロセスを放棄しなくて済むのである。

途中でコンピュータの設定を変えることは避けるべきだ。コンピュータオーディオファイル向け方法論の奥義は、自分が決めた「伝統的な作法」でリッピングを繰り返すことにある。




必要要件


  1. WindowsベースのPC(XP, Vista, 7)
  2. 十分な内蔵ハードドライブの空き容量
  3. 十分な外部ハードドライブの空き容量。NAS, USB, FireWire, e-Sata接続のディスク。
  4. dBpoweramp Music Converter。AIFF、WAV、FLAC用コーデック。マルチエンコーダーユーティリティ。



ステップ・バイ・ステップ


これから述べるインストラクションは、私がどのようにWindows XPとMac Pro、NASドライブを一緒に使ってリッピングを行なっているかを説明するものである。

補足:Windows XPはミュージックサーバーとしてWAVファイルの作業用コピーを格納している。Mac G5はAIFFファイルの作業用コピーを格納している。NASはFLACファイルのアーカイブ用コピーを格納している。

Windows XP - 作業用コピーとしてWAVファイル
Mac G5 OS X - 作業用コピーとしてAIFFファイル
NAS - アーカイブ用コピーとしてFLACファイル




ステップ1.いつでもリッピングできるようにコンピュータをセットアップする。




ステップ2.リッピングしたファイルを保存できるように内蔵ドライブと(または)他のミュージックサーバーのフォルダをセットアップする。

NAS上に「アーカイブ用コピー」と名付けたFLACファイルを保存するためのフォルダを作成。Mac G5上で走るOS X 10.4 Tigerは"Windows Sharing"を有効にしている(OS X 10.6 Snow Leopardでは単純に"File Sharing"と呼ばれている)。Windows PCでは元からある"My Music"フォルダを利用、dBpowerampからアクセス可能である。

OS X 10.4 Tigerの"System Preferences >> Sharing"を開き"Windows Sharing"にチェックを入れる。次に"Accounts"をクリックして少なくてもひとつはアカウントを有効にしておく。



OS X Snow Leopardなら"Preferences >> Sharing"を開き"Windows Sharing"にチェックを入れる。次に"Shared Folders"ボックスの下の+マークをクリックする。下のSSではMacのミュージックフォルダを選択して、"Share files and folders using SMB (Windows)"にチェックを入れている。少なくてもユーザーアカウントのひとつは有効にする。"Done"をクリックして、"Shared Folders"のボックスにミュージックフォルダがあるかどうか、右の"users"ボックスに"Read & Write Access"としてリストされているか確認する。






ステップ3.ダウンロードとインストール

dBpowerampとAIFFコーデック、マルチエンコーダーユーティリティ(WAVとFLACはデフォルトで含まれている)をダウンロードする。下記の3つのファイルをダウンロード&インストールする。

dBpoweramp - http://www.dbpoweramp.com/download.htm
AIFF - http://www.dbpoweramp.com/codec-central-aiff.htm
マルチエンコーダー - http://www.dbpoweramp.com/codec-central-utility.htm




ステップ4.dBpowerampの"general settings"を設定する。

dBpoweramp CD Ripperを起動する。上部の"Meta"ボタンの右にある小さな下向き矢印をクリックし、"Make sure PerfectMeta (Intelligent Lookup)"が有効になっているかどうか確認をする。



次に"Option"ボタンの右にある下向き矢印をクリックして"Encoder Priority"を展開し、選択可能な中で一番高い優先度を選ぶ。さらに"After Ripping"を展開して"Display Error Log"と"Do Nothing"が選択されていることを確認する。これによりリッピングが不首尾に終わった場合にエラーログがポップアップするようになる。




リッピングオプションを設定するために"Option"の大きなボタン(訳註:矢印ではなく)を押す。私が有効にしているのは"Secure (Recover Errors)"と"AccurateRip"、"Eject After Rip"である。



"Ultra Secure Ripping"は無効にしている。もうたくさんだ!と思ってしまうので。もし良好な結果を得るために3回から6回のリッピングが必要だと思ったら、その時に有効にするかどうか検討する。ダメージのあるCDをリップするために忍耐力を総動員して"Ultra Secure Ripping"を使うことは可能かもしれない。しかしこれには多大な時間の投資が必要であり、CDの状態によっては24時間リッピングが続くこともある。この点に関しては、通常のセキュアリッピングと、オンラインデータベースによるチェックサムの照合を行うことでよしとする。



オーディオファイルの間では「補間(訳註:interpolation)」という言葉は「不良品」を暗に示すことが多い。補間とは、リッピングプログラムが、判明している前後の値から推測または計算をして、中間の値や項を級数に挿入することである。

例えばCDで読めない部分をフレームBと呼ぶことにすると、リッピングプログラムはフレームAとフレームCを利用して、フレームBにどんな値を読むべきだったかを推測し、新しい値を補間する。このことは可能なかぎりパーフェクトにCDを保存するということに関して疑問を投げかける。

この懸念について私は次のように考える。補間されたフレームは、補間されていないフレームがプチプチカチカチいったりするよりは、ダメージのないCDから記録した音に近い、と。もしダメージのあるCDが歴史的に貴重なものなら、補間あり/補間なしの2種類のコピーをとるのが賢明である。

まったく補間を利用しないという戦略は推奨しない。なぜなら私の知るかぎり、FLACファイルからAIFFをコンバートする際に補間する方法が存在しないからだ。元のFLACファイルが補間されなかったせいでプチプチノイズ入りだった場合、このファイルから生成される後続のコピーもすべてプチプチノイズ入りになる。

補間に加えて、"Write To File"オプションも有効にしよう。これを有効にするとアルバムフォルダにログファイルが作成される。リッピングやその他の事項についてなにか悪い結果が起これば全て説明してくれる。このファイルをアーカイブ用コピーにと一緒に保存しておくことは重要だ。私はリスニング中にクリック音などのノイズが聞こえたらこのファイルを開くことにしている。ログを読めば、本当にノイズが聞こえたのか気のせいだったのか、あるいはスタジオでのレコーディングに起因するものなのか、といったことの判断材料になる。




ログファイルの一例(訳註:外部リンクです)


私はさらに2つのすばらしいオプション、"Eject After Rip"と"Prevent auto-run"を全てのCDドライブに対して有効にしている。前者は自分があまり注意を払っていない時に便利だ。他のどんな手段よりもリッピングの終了を気づかせてくれる。"Prevent auto-run"はWindowsや他のプログラムが毎回勝手にCDフォルダを開くのを防いでくれる。この2つのオプションは絶対に必要なものではないが、リッピング戦略を成功させる設定の一部だと私は考えている。



※訳者注
"Eject After Rip"を有効にすることは人によっては不便になると思います。
CDが挿入されていない状態になるので、リッピング結果をウィンドウ上に残しておくことができなくなります。



ステップ5.異なる設定に素早く切り替えるためのプロファイルを作成

dBpowerampのウィンドウ左下にある"Profile"の下向き矢印をクリックし、[Create Profile]を選択する。ウィンドウがポップアップするのでプロファイル名を入力する。



この新しく作ったプロファイルにリッピングに関する全てを設定しておく。先に述べたが、私のニーズは2つのミュージックサーバーと1つのNAS用に、計3種のファイルフォーマットを別々のロケーションに収めるということである。ここで早くも先ほどインストールしたマルチエンコーダーユーティリティの出番だ。 "Rip To"の下向き矢印から"[Multi Encoder]"を選択する。



dBpowerampのウィンドウ下段中央のボックスに、設定したファイルフォーマットが表示される。アーカイブ用コピーを作成するためにFLACエンコーダーを指定する。私は"Compression Level 0 (Fast)"を選択している。なぜなら私がFLACを推奨するのは圧縮アルゴリズムのためではなく他のすばらしい機能のためだからだ。もし必要ならお好みで圧縮率を変更してもかまわない。

"After Encoding Verify Written Audio"にチェックを入れる。"Output Location"は外部ドライブにするべきだ。この例では"M:"は私のNASであり、ステップ2で作成したようにアーカイブ用コピーのためのフォルダが設置してある。"Dynamic"を選択して"artists、albums、tracks"を設定し、後で役に立つようなディレクトリ構造にする。"Set"ボタンをクリックすればディレクトリ構造をカスタマイズすることができる。デフォルトでは1つのアーティスト名フォルダの中に、全てのトラックがアーティスト名+トラック名で保存される。私の好みのディレクトリ構造は、アーティスト名フォルダ/アルバム名フォルダ/トラック である。SSのようにこのダイアログボックスにはディレクトリ構造として選択可能な項目が表示される。




AIFFエンコーダーを追加する。"bit depth"と"sample rate"、"channels"は"Same As Source"にしておく。ここで選択したフォルダ"Automatically Add To iTune"のロケーションが自動的にMac G5上のiTunesのフォルダに追加される。ステップ2で設定したようにこのフォルダは共有されている。リップした後でiTunesを開く必要がある。出力されたファイルはiTunesライブラリに自動的に追加され、"Automatically Add To iTune"フォルダから削除される。注意しなければならないのは、このロケーションにリップしている間はiTunesを開いてはいけないということだ。トラックがおかしくなりインポートされないというトラブルを経験している。





WAVエンコーダーを追加する。"bit depth"と"sample rate"、"channels"は"Same As Source"にしておく。SSにある"My Music"フォルダロケーションはこのコンピュータのローカルドライブである。私はこのリッピング用コンピュータ(Windows XP)をミュージックサーバーとしても使っている。ディレクトリ構造は先に述べたものと同じである。



プロファイルの設定が完了すれば、SSのようにマルチエンコーダーのボックスにFACとAIFF、WAVEが表示される。





ステップ6.リッピング

ウィンドウ左上の"Rip"ボタンを押したら後はゆっくり座っていよう。コンピュータオーディオファイル向けリッピング方法論がいよいよ始動開始する。

1枚目のSSはdBpowerampがリップしている様子である。CRCカラムの緑色の文字列は、トラックがリップされてデータベース上の第三者のチェックサムと一致したことを示している。

Rip Statusカラムの括弧内の数値は「リップしたけどエラーは見つからなかったよ。[X人の]他の人がリップしたトラックとこのトラックは同じだね。結果も正確に一致してるよ」ということを表している。

dBpowerampのウェブサイトによるとAccurateRipの一致はリッピングがエラーフリーであることを保証するものだ。2枚目のSSでは10曲のトラックをリップし、結果が10曲ともAccurateだった場合のものである。






ステップ7.リッピング結果をチェックする。

計画した通りにリッピングが行われたか確認をする。iTunesを開かなくても、リップしたアルバムが正しい場所にあるかどうかフォルダ"Auto Add folder"で確かめることができる。これらのトラックはiTunesが起動するとすぐに消えてiTunesのフォルダに移動する。"Auto Add folder"は通常は空になるか、取り残されたトラックが見つかることがある。トラックがインポートされないまま残る原因は、なんらかの理由でインポートすることができないアルバムアートを含んだフォルダであることが多い。なので心配する必要はない。





WindowsのMY MusicフォルダにあるWAV作業用コピー。



NASのFLACアーカイブ用コピー。






ステップ8.整備完了

アーカイブ用コピーはそのままにしておく。プレイヤーソフトから作業用コピーを選択し音楽を再生する。コンピュータオーディオファイル向けリッピング戦略と方法論の準備はこれで整った。




終わりに


コンピュータオーディオファイル向けリッピング戦略と方法論を継続すれば、このドキュメントで最初に述べたゴールにたどり着くだろう。


「信頼できるストレージに、将来性のあるフォーマットで、必要であればメタデータ付きで、CDを正確にリップする」


熱烈な「デジタル芸術遺産保護主義者」ではない一般の読者にとってもこの方法論は役立つだろう。冒頭の手順を踏めばミュージックサーバーを便利に活用することができ、なによりも音楽を楽しむことができるようになる。

正面から取り組む努力を少しだけすれば、リッピングのやり直しや時間と金の浪費をしないで済む。自分のミスやコンピュータの不具合でファイルが消えても、ほんの数クリックで元に戻すことができるようになる。

このリッピング戦略と方法論の最大の利点は、サウンドのクオリティと利便性を犠牲にしなくても、自分の音楽コレクションは将来の変化についていくことができるんだ、という意識改革にあるのかもしれない。




訳註と用語集


訳註

オリジナル記事:
Computer Audiophile - Computer Audiophile CD Ripping Strategy and Methodology
http://www.computeraudiophile.com/content/309-computer-audiophile-cd-ripping-strategy-and-methodology/



オリジナル記事との差異:

・そのまま訳すと日本語として異常に長くなってしまう部分はセンテンスを分けるか、意味上問題がなければ割愛した。これには学術論文を気取った冗長さやシェクスピア『マクベス』からの引用符のない引用が含まれる。

・エフェクティブライティングを意識したドキュメントではパラグラフを崩すと文意や効果が変わってしまうおそれがあるが、読みやすさを優先し改行を入れた。

・長いドキュメントなので迷子にならないよう、数カ所で見出しや項目を設定し直し、さらに複数のページに分けた(オリジナルは全1ページ、とにかく長い)。


その他:

・なるべくアルファベットが混ざらない文章を心がけたが、dBpowerampなどのソフトウェアについては英語のまま使用している方が多いと思い英語表記を残した。

・"rip"と"ripping"...名詞の場合は「リッピング」、動詞の場合は「リップする」という表記に統一した。つまり「リッピングする」を排除した。違和感があったらごめんなさい。


ピーター・コープランドについて:

Peter Copeland
http://en.wikipedia.org/wiki/Peter_Copeland

"Manual of Analogue Sound Restoration Techniques" PDFファイル版
http://www.bl.uk/reshelp/findhelprestype/sound/anaudio/manual.html



用語集

アーカイブ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%96

デジタル保管
http://en.wikipedia.org/wiki/Digital_preservation

サンプリングレート
http://e-words.jp/w/E382B5E383B3E38397E383AAE383B3E382B0E383ACE383BCE38388.html

AIFF
http://ja.wikipedia.org/wiki/AIFF

ALAC
http://ja.wikipedia.org/wiki/Apple_Lossless

WAV
http://ja.wikipedia.org/wiki/WAV

FLAC
http://ja.wikipedia.org/wiki/FLAC

AccurateRip
http://www.accuraterip.com/

NAS
http://e-words.jp/w/NAS.html

CRC 巡回冗長検査
http://www.sophia-it.com/content/%E5%B7%A1%E5%9B%9E%E5%86%97%E9%95%B7%E6%A4%9C%E6%9F%BB


2 コメント:

初めまして。
dBpowerampのマルチエンコーダ機能を使いたいと思い調べていたらこの記事にたどり着きました。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10258978795

自分のPCだと、dBpowerampのマルチエンコーダで例えばWAVとAIFF同時にリッピングしても、例えばWAVだけにログが残り、AIFFの方のファイルにはログが一切残らないのですが、ブログ主さんの載せたhttps://audiophilestyle.com/s3/files/2009/1029/Shelby-Lynne-Just-a-Little-Lovin.txt
このログみたいに、マルチエンコーダを使ったなら、使った分だけのエンコーダ(例えばAIFFとFLACみたいな)のログが残るようにしたいのですが、何故か自分のはなりません。
やり方とかもし分かれば教えて欲しいです。

詳しくは知恵袋の内容と同じです。
引用ですみません。

もしお時間あれば返信いただけると有難いです。

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